「LINE VOOM(ラインブーム)」が2026年9月30日11時ごろ、サービスを終了しました。2021年11月のスタートから、およそ5年での幕引きです。
終了をめぐる世間の反応は、おおむね歓迎でした。一方で、投稿の受け皿として新しい「投稿」機能が用意されています。ただし全アカウントが使えるのは2026年10月21日です。ここには20日間の空白があります。
私は普段からLINEを連絡手段として使っていますが、VOOMを開いたのは数回だけでした。この記事では、約5年で終わった動画SNSの実像と、メッセージアプリが「発信の場」をどう作り直そうとしているのかを整理します。動画SNSとしての勝ち負けに加えて、企業アカウントが押さえるべき実務対応も扱います。
LINE VOOMとは何だったのか——タイムラインからショート動画へ
LINE VOOMは、LINEの「タイムライン」を刷新する形で2021年11月に始まりました。名前は「View(見る)+ Boom(ブーム)」に由来するとされています。友だちの投稿を眺める場所から、クリエイターの動画を「おすすめ」で見る場所へと性格を変えた機能です。
ショート動画全盛期の後発組
2021年当時はショート動画の全盛期でした。TikTokが急成長し、Instagramのリールが存在感を増し、YouTubeもショートを投入した時期です。LINE VOOMは、この競争に後発として名乗りを上げた格好でした。
LINEは2023年春に「GYAO!」と「LINE LIVE」を終了し、動画事業のリソースをVOOMに集中させます。2024年にはクリエイター向けの支援も始めました。それでも、話題になる機会は多くありませんでした。
タブの位置が「ショッピング」に置き換わる
転機は2025年9月に訪れます。LINEヤフーはVOOMタブをショッピングタブに置き換える計画を発表しました。2026年7月2日の15周年記念イベントでは、VOOM自体の終了が事実上確定します。そして9月30日、サービスは静かに終わりました。終了の告知は7月15日に出ており、投稿データのバックアップ申請の受け付けも同じ日に始まっています。
なぜ終了するのか——公式の理由と構造的な敗因
LINEヘルプセンターの告知は、終了の理由を「当社におけるサービス提供体制の見直しおよび体験価値の再編」と説明しています。数字で見ると、もう少し生々しい構図が見えてきます。
競合3サービスとの差が開いた
TikTokはTikTok発のスターと「TikTok売れ」という経済効果を生みました。リールはInstagramとFacebookに溶け込み、YouTubeショートは長尺動画の入口として機能しています。それぞれに「プラットフォーム内での役割」がありました。
LINE VOOMには、その役割が最後まで見つかりませんでした。他サービスからの転載が多く、VOOMでしか見られない魅力が乏しかったと指摘されています。「わざわざこのアプリで動画を見る理由」を、最後まで用意できなかったという見方もあります。
「連絡アプリ」で動画を見る習慣が育たなかった
LINEの中心は、あくまでトークです。ユーザーは用事があってアプリを開き、用事が済めば閉じます。動画を30分眺めるためには開かないアプリでした。この利用動機の違いは、機能の改善では埋められない差でした。
「小学生しかいないSNS」——子供たちの抜け道と嫌われた理由
終了が歓迎された理由は、競争力の低さだけではありません。VOOMには、ほかのSNSにはない特殊なユーザー層がいました。
13歳未満でも使える唯一のショート動画
TikTokとリールは、13歳未満のアカウント利用ができません。YouTubeも年齢に応じた制限やペアレンタルコントロールの対象です。LINEは利用推奨年齢が12歳以上とされていますが、禁止ではありません。家庭の判断次第で、小学生でも使い続けられます。
NTTモバイル社会研究所の調査によると、LINEの利用率は小学生高学年で約半数、中学生では9割超です。子供たちにとって、ショート動画を心置きなく楽しめる数少ない場がVOOMでした。
アプリ単位の制限では、機能を止められない
保護者にとっての悩みは、そこにありました。フィルタリングやペアレンタルコントロールはアプリ単位でかかります。LINEアプリの中の一機能であるVOOMだけを止めることはできません。LINEの設定にも、VOOMだけをオフにする項目は用意されていませんでした。
「子供との連絡用なのにVOOMはいらない」。そうした声が長く続いた末の終了でした。YouTubeには「キッズが反対署名をした」という解説動画もあり、当事者と大人の受け止めが真逆だったことがうかがえます。
後継の「投稿」機能とは何か
VOOMの代わりに用意されたのが、LINE公式アカウントの「投稿」機能です。テキスト・画像・動画を自由に組み合わせてコンテンツを作り、ユーザーへ発信できます。
表示先は「ホーム」タブとビジネスプロフィール
投稿が表示されるのは、LINEアプリの「ホーム」タブと、LINE公式アカウントのビジネスプロフィールの2か所です。ただしホームタブへの表示は保証されません。LINEヤフーの基準に従って選ばれる仕組みです。ビジネスプロフィールへの掲載は、10月21日のリニューアル以降になります。
過去の投稿は引き継げない
注意したいのは、VOOMの投稿を「投稿」機能へ移行する手段がないことです。同じ内容を出したい場合は、提供開始後に手作業で作り直す必要があります。
さらに、フォロワー数の表示は2026年9月16日に廃止されました。「最近の投稿」パーツも10月21日のリニューアルで消えます。実績値を記録しておきたい運用担当者は、早めに書き出しを確認してください。
スケジュールと10月1日〜20日の「空白」
今回の移行で最も実務的な論点は、日程のズレです。VOOMは9月30日に終わり、「投稿」機能が全アカウントで使えるのは10月21日です。この間、公式アカウントからの発信手段が実質的に途切れます。
| 日付 | 出来事 |
|---|---|
| 2021年11月 | タイムラインを刷新し、LINE VOOMがスタート |
| 2025年9月 | VOOMタブをショッピングタブへ置き換える計画を発表 |
| 2026年8月26日 | 「投稿」機能の提供開始を9月2日から延期 |
| 2026年9月16日 | 認証済アカウントへ「投稿」機能の提供開始・フォロワー数表示を廃止 |
| 2026年9月30日 | LINE VOOMが11時ごろにサービス終了 |
| 2026年10月1日〜20日 | 旧機能は終了済みで新機能は未解禁の空白期間 |
| 2026年10月21日 | すべてのアカウントで「投稿」機能が利用可能に |
メッセージ配信は空白期間も使えます。止まるのは「投稿」だけです。とはいえ、ホームタブ経由の集客に頼っていたアカウントは、この20日間の代替導線を用意しておく必要があります。実際、10月に入ってVOOMのタブが消え、投稿先を失ったという声も出ています。
【比較表】企業アカウントの発信手段、LINEは何が違うのか
「投稿」機能を他のSNSと並べると、LINEの立ち位置が見えてきます。拡散力ではなく、届く確実性に特徴があります。
| 発信手段 | 主な表示先 | 特徴 | 向く用途 |
|---|---|---|---|
| LINE「投稿」 | ホームタブ・ビジネスプロフィール | 友だち接点との併用が前提 | 既存顧客への情報発信 |
| フィード・リール・ストーリーズ | 視覚表現と拡散のバランス | 認知獲得とブランディング | |
| X | タイムライン・検索 | 速報性と会話の起点 | 話題化とリアルタイム対応 |
| TikTok | おすすめフィード | 新規リーチの伸びが大きい | 若年層への到達 |
LINEの強みは、国内月間利用者数1億人という規模(2025年12月末時点)です。国内SNS利用者数は8,519万人、利用率はLINEが71.1%で首位という調査もあります。ただし拡散は起きにくく、受け手は「友だち」に限られます。
ホームタブのリニューアルとAI戦略——次の10年へ
「投稿」機能は、単独の新機能ではありません。LINEは2025年からアプリ全体のリニューアルを進めており、その一部として位置づけられます。
「アクティビティ」と「コンテンツ」の2層構造
新しいホームタブは2026年3月5日から提供が始まりました。友だちリストや通知を並べる「アクティビティ」と、ニュース・SNS投稿・人気動画を集める「コンテンツ」の2層構造です。目玉は「Today’s pick」で、関心や話題性をもとに選んだ記事や投稿が上部に並びます。
各コンテンツにはリアクションボタンがあり、使うほど表示が最適化されます。企業やクリエイターの投稿を配信する場でもあり、LINE広告の配信面も広がる見込みです。
15周年で示した「行動プラットフォーム」への転換
2026年7月2日の15周年イベントでは、AIエージェント「Agent i」とPayPayのアカウント連携が発表されました。PayPayの登録ユーザーは7,400万人規模です。「会話の場」から「行動の場」へ軸足を移す構想が示されています。
その構図の中で、動画SNSは優先度を落としました。限られた開発資源を、AIとコマースに寄せたという整理ができます。
メッセージアプリは「SNS」になれるのか
VOOMの終了は、メッセージアプリがSNS機能を内包する難しさを示しました。ユーザーは、用途の違う2つの機能を1つのアプリに求めません。トークの邪魔にならない範囲でしか、追加機能は受け入れられませんでした。
新しい「投稿」機能は、その教訓を踏まえた設計に見えます。クリエイターの動画で長時間滞在させるのではなく、企業とユーザーの接点を短く濃くする方向です。拡散を狙うSNSではなく、関係を保つチャネルとして割り切っています。
海外ではWeChatが、メッセージアプリの中に決済・予約・行政手続きまで抱え込む「スーパーアプリ」として定着しました。LINEがAgent iとPayPayで目指すのも、同じ方向です。SNSとしての成功より、生活インフラとしての占有率を選んだと言えます。
10月21日の全アカウント解禁で、ホームタブの「投稿」がどの程度見られるのかが最初の試金石になります。運用側は、配信後の反応を数字で追い、導線を調整していきましょう。
【FAQ】LINE VOOM終了と「投稿」機能に関するよくある質問
ここでは、移行に関してよく寄せられる疑問をまとめました。運用担当者の確認事項としても使ってください。
| 質問 | 回答 |
|---|---|
| VOOMの投稿は「投稿」機能に移行できますか? | 移行機能はありません。同じ内容を手作業で作り直す必要があります。 |
| 「投稿」機能はいつから使えますか? | 認証済アカウントは9月16日から順次、すべてのアカウントは10月21日からです。 |
| フォロワー数はどうなりますか? | 2026年9月16日に表示が廃止されています。数値は事前に書き出しておく必要があります。 |
| 一般ユーザーも「投稿」機能を使えますか? | 使えません。対象はLINE公式アカウントで、Web版の管理画面から作成します。 |
| 「新しいLINE VOOM」というサイトは本物ですか? | 本物ではありません。終了後に新たなVOOMが提供されることはないと公式が明言しています。 |
| VOOMの写真やバックアップはまだ取り出せますか? | 申請期間は2026年9月30日に終了しました。済んでいない場合は取り出せません。 |
投稿データを取り戻せる期間は、すでに閉じています。私の周囲でも「気づくのが遅れた」という話を聞きました。次回の機能終了時は、告知が出た時点で保存を進めておきたいところです。
まとめ——5年で終わった動画SNSが残したもの
LINE VOOMは、タイムラインの延長として生まれ、ショート動画の競争に挑み、子供たちの受け皿として使われ、歓迎されながら終わりました。約5年の実験は、メッセージアプリに動画SNSは馴染まないという結論を残しました。
その代替として登場した「投稿」機能は、拡散ではなく関係維持に振り切った設計です。10月21日以降、ホームタブがどう変わるかを自分のアプリで確かめてみてください。運用中のアカウントなら、日程と実績値の扱いを今のうちに整理し、新しい発信の場での一歩目を始めましょう。


コメント